ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則

この本の基礎となっている、GTD(Getting Things Done)の考え方に関しては、お恥ずかしいことに原書(Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity)も訳本(仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法)も読んでませんでした。というのも、GTDの手法や本質的な話は既にいろんな所で議論されていますし、訳本も手にしたことはあってもイマイチ重い印象があって、結果手を出せずにいたのです。そういった私の思いをとっくに見透かしてたように、GTDの続編となるこの本を翻訳・編集されたのがこの本です。サイズ・分量など通勤電車でも読みやすい装丁は、リーマンにはうれしい限り。内容も単に手法としてのGTDの話のみならず、それを基礎としてどのような工夫をしていくべきか、そういった一つ上のレベルの話が満載です。LifeHackに興味がある人は必読だと思います。
日本のLifeHackの第一人者である田口さんの日本語版解説が良い道案内になっており、GTDに初めて触れる人でも速やかに本文に突入できるようになってます。また、面白いなと思った点としてページ下の名言集があります。本文を読んでいるときにはどうしても本文に集中しちゃうので、なかなか目にできないのですが、後でまた読もうという気にさせられますね。きっとこの本は1回読んだら終わりではなく何回も開く類の本なので、その時に一つでも新たな発見があれば、という想いを込めてこのような工夫されたのかなと思いました。
単なる自己啓発本ではなく、仕事や生活全般に対していまいちすっきりとしない漠然とした不安感をもっていて、具体的にどう対処していいか悩んでいる、そういう人にオススメできる本です。

以下、印象に残った言葉と感想です。

  • 「目の前に振ってきた仕事はすぐさま片付ける癖をつける。」
    • 優先度を付けることは悪いことではないのだけど、つければそれでいいってもんじゃない。人から振られた仕事に対しては、よほどその瞬間に緊急性の高い仕事をやっていない限りは、なるべく早くリアクションをとるように心がけていこう。
  • 「頭の中をいっぱいにしておくことによって、自分があたかも頭脳明晰で、仕事を沢山やっているような気になることができる。私たちのGTDのプロセスはこの困った問題に真っ向から取り組むものだ。」
    • やるべきことを頭に入れたままにした自分に対して「イソガシイオレッテス・テ・キ」なーんて自分に酔ってしまってはいけない。そんな「仕事をやっているような気になる」暇があるんだったら、目の前の仕事を片付けるのが自分のため皆のため。
  • 「問題は思考と行動の「バランス」ではない。そこにある関係性である。そしてその関係はあなたがなりたい自分を自覚してこそ見えてくる。」
    • 「あなたがなりたい自分」つまり自分はどうしたいのかがその根底にある。
  • 「役に立つ「枠組み」は窮屈に感じないものだ。(中略)効果的な「枠組み」とは、場所や時間を奪うものではなく、場所や時間を作り出すものだ。」
    • 今まで枠組み作りに対しては、イマイチ積極的にはなれなかったのですが、この言葉ですっきり。もちろん「役に立つ枠組み」でないといけないですが・・
  • 「創造性を発揮できる人は「整理をする」。そしてそのための整理は意識せず、自然になされていなければならない。「整理しなければいけない」と思っているうちは、心のエネルギーが整理することのほうに浪費される。それでは創造性を発揮することはできない。」
    • GTDの本質ですね。物事が整理できてないのに課題に対する有効な対処なんて思いつくはずもない。
  • 「最初に言っておくべきことを、つい言いづらくてきちんと伝えておかなかったために、あとになってさんざんな目にあうという経験を、私は何度もしてきた。人間関係、あるいは仕事上での付き合いでのストレスの大半は、お互いの価値観がずれていることに気がつかないことから生じる。」
    • 強く共感。どんなプロジェクトでもその開始時に「本プロジェクトを遂行するにあたって共有すべき価値観」を、メンバーと話し合うべきだし、これはプロジェクトマネージャの大切な仕事だと思います。(さんざんな目にあうという経験を私もしてきてるし・・)。
  • 「生産性を高めてくれるのは、「心にひっかかっている物事を取り除き、行動を起こしやすくするという考え方」であったのだ。(略)システムがするべきことを勘違いしてはいけない。(略)システムが得意なのは、何かを覚えたり、思い出してくれる機能だ。一方、あなたの頭が得意なのは、次々に出現する情報を元に、考え方をまとめ、創造的に意思決定をすることだ。」
    • これもGTDの本質。あとはこれを実践あるのみ。
  • GTDを実践できる人や企業の共通点はたったひとつしかわかっていない。それは、内面からの強い向上心があるということだ。」
    • そう。誰のためにでもない自分のためのGTDですからね。

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則

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