Web2.0でビジネスが変わる

日本に初めてセグウェイを導入したことで知られる神田敏晶さんのWeb2.0に関する著書。一貫してユーザ視点で書いてある文体はとても読みやすく、あっという間に読んでしまいました。Web2.0が自分にとってどういう影響を及ぼすものなのかを知りたいと思っている方は、「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)」より先にこちらを読むほうをオススメします。「Web2.0でビジネスが変わる [ソフトバンク新書]」→「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)」→「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)」の順番で身近な出来事からより抽象的な概念に広がっていく感じなので、この順番で読めば、着実にWeb2.0に関する深い理解を得られるのではないかと思います。
神田さんの一番いいたいことは冒頭P11あたりでガッチリと述べられている、

みなさんに申し上げたいのは、バズワードに踊らされるのではなく、Web2.0という「現象の当事者」になっていただきたいということだ。そう、Web2.0を理解するには「とにかくユーザになってみる」ことだ。ユーザになれば、何が便利で何が不満か、一瞬にしてわかる。インターネットには、誰もがWeb2.0を体験できる環境がすでに用意されている。そして、Web2.0は実際に体験しなければわからない世界だということを、ぜひ知っていただきたいのだ。(P11-12)
Web2.0でビジネスが変わる [ソフトバンク新書]

ここに尽きるかと。つまりこの本は神田さんというレンズを通したWeb2.0体験記&主張なのです。面白いのは後半。「第5章 好きなことを仕事にする 〜僕の体験的CGM論〜」では机上の理屈ではなく、自分の過去のさまざまな体験や行動に基づいた感覚や主張を述べられているあたりかなり説得力があります。「第6章 Web2.1への宿題」では示唆に富んだ今後の課題を提示していて、なかなか興味深いところです。もっとも、神田さんからすればもともとWeb2.0的生き方をしてきた自分に時代がやっと追いついてきたんだ、という感覚なのかもしれません。


以下、印象に残った言葉と感想です。

Web2.0がもたらしたのは「ウェブを通じて○○ができる」という人の行動様式の変化なのだ。(P18)

確かに。Web2.0は商品やサービスそのもののみならず、それらを通じた新しいライフスタイルの提案まで行こうとしているのかもしれません。

日本のSNSというとすでに400万人を超える会員が利用している「mixi」が有名だ。
(中略)
マーケッティングにおいて、爆発的ヒットになるボーダラインとして「人口の4%を超える普及率」というのがあるのだが、日本の人口を1億3000万人と考えると4%は520万人。この本が発売される頃にはこの数字を超えているかもしれない。(P120-121)

これは単純に「へぇ〜」ということで。500万人がボーダラインなんですね。

ジャーナリズムは客観的で公正で第三者的立場をタテマエとされるが、僕はそんなことは神様でさえ不可能だと思う。
(中略)
そんなことよりむしろ、ジャーナリスト個人が自分の立場を明確にし、自分のとって真実がどのように映ったのかを語ろうとすることが重要ではないか思う。(原文のまま)(P134)

ここはまったく同意。「新聞やTV、インターネットも含むメディア全般が必ずしも正しいとは限らない」という情報リテラシーは、これから絶対必要となると思います。

結局、僕がしてきたことは一言で言うと「自分の好きなことを仕事にする」ということに尽きると思う。もっと極端なことを言うと「好きな仕事を探す」のではなくて、まず好きなことをやってきて、それをどうにかして仕事につなげられればいいと思っている。(P200)

これが真正面にいえる神田さんはスゴイし、また説得力がありますね。

「金持ちはアナログ、貧乏人はデジタル」という構図が登場するのかもしれない。(P216)

ここは興味深い示唆だと思いました。

コンピュータリテラシーの二極化による「デジタルデバイド」問題が注目されるが、それよりもボクは、ジェネレーションによって明らかに異なる
「ネットの付き合い方に関するデバイド」にも注目する必要があると考えている。(P221)

ここもすごく同意。生まれたときから携帯やネットがある世代の人たちがある程度の年齢になったとき、どのような感覚をもってネットと付き合おうとしているのか。その感覚は私も非常に興味のあるところです。人によっては「Web2.0体質」みたいなものがあるのかもしれません。

この本は共感するところが多く、この本を読むと神田さんに会いに行きたくなる。そんな一冊でした。いつか神田さんに会いにdotBAR行ってみたい。元気になれそう。