仮想化集中セミナー〜 全ての仮想化テクノロジーを理解する日 〜参加メモ

先日、サン・マイクロシステムズ主催の仮想化集中セミナーに参加してきましたのでそのメモです。会場は行くといつも迷ってしまうwグランドプリンスホテル赤坂。会場は300席位の大きなホール会場にて。席は6-7割程度の状況でしたので、200人弱程度か。参加者に年配の方が多いのが特徴的でした。(もしかすると仮想化技術なので、メインフレーム経験者が多いのかもと勝手な推測)

セミナー趣旨

  • サーバの仮想化はすでに本格的導入時期
  • さまざまな特徴をもつ仮想化ソフトウエアも続々とそろってきている反面、必要とされるノウハウが異なるため自社サービスに最適な仮想化テクノロジー選びに悩む原因にもなっている。
  • セミナーは、本格導入のためにいくつかの仮想化テクノロジを比較検討しようとされている方に主要な仮想化テクノロジの特徴を紹介
  • Citrix, Microsoft、Sunなどの主要な仮想化テクノロジをとりあげ、その特徴をベンダー自身が説明。
  • 見逃してはいけない仮想化を前提としたサーバ選択のポイントもあわせて説明。

開会の挨拶(サン・マイクロシステムズ株式会社 安田稔氏)

  • この不景気の状況においても利益を上げている会社の共通点が、コスト削減(コストに敏感な会社)。エコに関するビジネスを持っている会社。
  • 仮想化はこれらの解決に一番近道なソリューションであると考えている。
  • Sunの紹介、売り上げ:1兆2億。160カ国の拠点、3万5千の従業員。600万以上のJava開発者
  • x86は仮想化に適したサーバ。仮想化においてはCPUのコア数とメモリ搭載量がポイントになる、Sunの製品はスロット数が多いといった高密度の製品特徴がその理由
  • 仮想化が実現すること。サーバ統合、省スペース運用、アプリ展開をすばやく、どこからでも利用可能。
  • 主な利点。効率改善とコスト削減、ビジネスの機敏性向上、ビジネス継続性の最大化。

シトリックスで始める仮想化(シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 平谷靖志氏)

  • XenはCitrixの商標である。今回はXen DesktopとServerについてお話をする。
  • 日本では仮想化が他国ほど進んでいない
    • 仮想化システムの安定性
    • 仮想化オーバーヘッド
      • 仮想化オーバヘッドによりアプリケーションパフォーマンスが落ちる
    • ゲストOS・アプリケーションのサポート
      • 仮想マシン上ではいままでのアプリケーションが動かなくなる恐れ
      • OSベンダ、アプリケーションベンダーは仮想マシン上の動作をサポートしない
    • 導入コスト
      • 仮想化を導入すると、物理サーバよりもコストが高くなる(特に初期費用)
  • XenServerが安定している理由
  • XenとXenServerの違いは「安定性」
    • オープンソースXenは不安定なコードがはいっている場合もある。XenServerはCitrixによる安定性テストを行ったうえでリリースしており、テストで発見された不具合はオープンソースXenにフィードバックをおこなっている
  • XenServerは仮想化オーバヘッドは少ない
  • XenServerはマイクロソフト認証ハイパーバイザであり、マイクロソフトのサポートを受けられる。
  • 仮想化はこれらの素性がしっかりしていないと、使うのに躊躇してしまうが、Xenははっきりさせている。
  • サーバープロビジョニング。物理と仮想化のダイナミックワークロードプロビジョニングをアプリケーションワークロードに対して可能。-複数のサーバを1つのファイルイメージから起動できる。
  • XenDesktop
    • いくつかのプロダクトから構成されたスイート。デリバリコントローラやプロビジョニングサーバがあるのがポイント
    • デリバリコントローラでははポリシ制御(ユーザや端末に応じたデータの持ち出しや印刷の可否を制御)が可能
  • BYOC(Bring Your Own Computer)の実現
    • 会社は購入費用を社員に渡して好きなPCを購入してもらう。(結果PCは個人の資産となり会社が管理するものではなくなる。よって会社は戦略上重要ではない資産(社員のPC)の管理に関わるコストやリスクを最小化することが可能になるという考え方)
    • 会社は仮想化技術を用いたデスクトップ環境のみを提供する。
    • IntelとCitrixがコラボレーションしてデスクトップ仮想化ソリューションを共同開発。
    • Type1の仮想化(ベアメタル)により完全に環境を分離。
  • PROJECT INDEPENDENCE
    • バイスではなく、サービスとしてデスクトップを供給する。
    • BYOC-戦略的ではない資産(デスクトップ)を取り除く
    • ユーザのための"my life"と"my work"の橋渡し
    • これらは2009年後半に提供を予定。期待していただきたい。

仮想化環境におけるAMD Opteron(TM) プロセッサの優位性(日本AMD株式会社 山野洋幸氏)

  • Barcelonaから継承している機能
    • 性能向上のための機能
      • 多段(L3)キャッシュとか。IntelAMDの後追いで同様の機能を採用。
    • 電力効率のための機能
      • 4コアを別々にコントロールして負荷に応じた周波数設定(ACPIを使ってるのでソフトウェア介在可能
      • CoolCore。使ってないブロックはクロック供給を停止。1サイクルごとに実行される
  • Shanghaiの特徴
    • 45nmプロセス
    • HyperTranport3(core間の通信機能)が入る。4,8ソケット程度になるとHT3の優位性がでる。
    • スマートフェッチによる電力効率。DeepSleep時にL1,L2のデータの一部をL3に退避。起動時のパフォーマンスを落とすことなく電力消費を実現。
    • 仮想化支援機能
      • CPUのトラブル発生に対する機能。6MbのL3を12に分割し問題のあるエリアをさけて縮退運用することが可能
  • 優れたハードウェア支援による仮想化
    • 仮想化技術はもともとメインフレームを中心で発展。AMDメインフレームの技術を転用した。
    • 初期の頃は仮想化関連の命令を追加していた。(インテルも同様のアプローチ。)近年はOpteronに仮想化を想定したメモリ管理をマージする方向で発展。
    • NestedPaging
      • 仮想化環境においてOSは1つのメモリ空間で動いていると考えているので、仮想化環境ではそれが入れ子になる。通常は入れ子に対してハイパバイザがハードと物理メモリの間を仲介していたが、それをCPUでサポートするようになった。
    • TaggledTLB
      • TLBをタグ付けで管理。メインフレーム技術。TLBはいままでは1つしか生成できなかったため仮想化を切り替える度に削除と生成を行う必要があったがそれをしなくてもよくなった
    • Extended Migration
  • 仮想化のベンチマークはまだスタンダードのものがなく、vmware社のデータを参照となるが、AMDはランキング上位を独占
  • 今後の製品ラインナップ
    • 2009年度末には6コア。FioranoからはAMD自体でのチップセット。I/Oの仮想化が入る。現状、I/Oのマッピングはハイパーバイザで行われているが、将来はハードでサポートする方向。
    • 2010年頃Maranelloは8コア-12コア
  • 2009へむけての計画"Istanbul"
    • L3内にキャッシュのディレクトリデータをもつことでキャッシュのレイテンシを改善する。ユーザ側でプロセッサ運用ができるようになる機能(製品は2.7Gだが、通常運用を2Gに制限するなど)が入る。

仮想化時代のサーバ選び(サン・マイクロシステムズ株式会社 的場謙一郎氏)

  • 最近のキーワード「クラウドコンピューティング」。ネットワークを雲にみたててコンピューティングリソースを提供。
  • 雲=Network。Sunの基本理念は「Network is the Computer」。20年以上かわらないSunのビジョン
  • サーバ仮想化の落とし穴
    • ハイパーバイザーの導入によりハードウェアやOSの管理が不要になるわけではない。
    • 物理環境と仮想環境が分離されることによる管理の複雑化
      • どこで動作しているか確認しないとわからなくなるため管理が複雑かする。
    • 負荷の上昇(利用率上昇)によるボトルネックの顕在化
    • 既存の管理フレームワークと仮想化環境の管理フレームワークの統合
      • サーバが1台になったにもかかわらずバックアップはOS分必要など
    • ベンダーロックインの可能性
  • メモリ要件とサーバのサイズによる考察
    • 小さい物理サーバをたくさん置くことと、大きなサーバにたくさんの仮想マシンを置くことについて、仮想化されたほうが分割損がない。
    • 仮想化はハードをまたがることはできるが、ハードをまたがっての実行はできないため。結果的に物理台数が少ない方を選ぶだろう。(集約による効率化)
  • サーバ選び
    • CPU、メモリは十分だが、ディスクやNWが足りなくてボトルネックとなる可能性がある。
    • 運用コストを考えると多数の小型サーバより少数の大容量サーバを
  • クラウド向けストレージ
    • OpenSolarisペースのアプライアンスストレージシステム。DtraceやZSFを利用できる。
    • ストレージ分野でもSSDが注目されている。メモリとディスクの間のキャッシュとして利用、ログ領域をSSDにアロケートしてボトルネックを解消。
  • まとめ
    • 仮想化によるハードの隠蔽はユーザ側視点、魔法の呪文ではないことに注意
    • CPU単体以外にもメモリやI/Oにも目を向ける。
    • サーバの体積を減らすことと、管理を容易にすることは異なる問題
    • IT資源についてあらたな選択しを検討できる時代である(SSDなど)

サンの仮想化戦略 − SUN xVM portfolio(サン・マイクロシステムズ株式会社 白川晃氏)

  • 仮想化のソフトウェア的・ソリューション的切り口でのセッションである。
  • 現時点では4corex4socketのマシンで512Mメモリを割り当てたXPは80VMくらい動かせる。
    • 例えばもう少し技術が進み3倍の性能となったとして240万円のサーバに240VM動かせられれば240人の社員に1人あたり1万ということになる。
  • 機種依存性の排除
    • 本当に搭載されているものとちがうものを見せられる?
    • すでに実機として入手できないデバイス仮想マシンで提供することにより旧環境を延命。
    • 仮想環境マシンメーカ間での標準化がすすんでいる。(注:ただし仮想ドライバのところだけは各メーカの腕の見せ所(=オープン化できないところ)らしい。これはおそらくドライバがもつプロプラエタリな部分が関係するためと想定される)将来的には(デバイスドライバの齟齬を起こさない範囲での)ファイルイメージをそのまま別仮想マシンへのポーティングが可能になる。
  • 4つの柱「Sun xVM portfolio」。オープンにこだわる。
    • xVM VirtualBox オープンな開発者むけ仮想化ツール
    • xVM VDI,いつでも、どこでも、どんなデバイスでも
    • xVM Server,大規模運用にあわせた本格ハイパーバイザ
    • xVM OpsCenter、マルチプラットフォーム対応の統合管理ツール(オップスセンターと呼ぶ)
  • xVM VirtualBox
    • virtualbox.orgで配布。
    • いわゆるType2のハイパバイザ、そこそこ性能でるようになってきた。
    • プレゼンしたノートPCはMac。実はプレゼンはVirtualBox上のXP上でうごいてた。
    • Type1は性能重視なので、サーバ系はサポートされているが、現状ノートPCは対応ができない。
    • ゲストOSは30種類以上、MSDOSNetWareも可能なのはVirtualBoxくらい。
    • 32bitホストで64bitゲストも実行可能。(機能が入ったばかりなのでそこそこではあるが)
    • 仮想環境は最大127までとしばっていたが、最新は1024までいけるようになる。
    • デモ。Windowns7の仮想化環境を作成を入れてみる。(CPUの仮想化支援機能をONにしていた)
  • xVM VDI
    • いままで提供していたSunRayシンクライアントでも、PCやMacのブラウザでも仮想デスクトップ環境がアクセスできるソリューション。
    • 既存のPCを有効利用したいというお客さんの要望に答えるもの。ブラウザからログインするだけで使える。
  • xVM Server
    • ベースとしてXenを使っている。
    • マスタの部分はCtrixはCentOSにしているがSunはOpenSolarisにしているのが特徴であり、Solarisの恩恵を受けられる。(ZFSとか)
    • BUI(ブラウザユーザインタフェース)でゲストOSの設定が可能。
    • LiveDVDもあるのでとりあえずのお試しも可能。
  • xVM OpsCenter
    • BUIとの違いはOpsCenterでは仮想マシンだけでなく、ネットワークにつながっている物理マシンも管理可能。
  • 重要なのはオープン。例えばOpsCenterはHyper-V,Vmwareにも対応。Severでも相互運用が考慮されている。

マイクロソフトのサーバー仮想化戦略 〜Windows Server 2008 Hyper-Vの御紹介〜(マイクロソフト株式会社 藤本浩司氏)

  • Windows Server2008にHyper-Vが含まれている。9月の段階でほぼすべてのベンダにてHyper-Vが動作確認できている。
  • 2009年にはx86サーバ総出荷の43%が仮想化機能が標準搭載されたWindowsServer2008になると予測。
  • 仮想化製品市場のシェアは(ライセンスベース、IDC調べ)で30%弱。vmwareはGSX,ESXあわせて24%程度
  • 想定としてNTや2000が3割程度あると考えており、仮想化を利用したマイグレーションの相談が増えている。
  • Microsoft 360 Virtualization
    • サーバの仮想化、デスクトップの仮想化、アプリケーションの仮想化、プレゼンテーションの仮想化
    • Application Virtualization たとえばXPからVistaへ以移行する際に必要なDLLを集めてカプセル化して移行先での動作を実現する。
  • マイクロソフトの仮想化テクノロジ:Hyper-V
    • WindwosServer2008が使えるハードでは標準でHyper-Vが使えるということ。
    • パフォーマンスについて2-3%のダウンはあるが、ハードウェア性能の向上ありパフォーマンスに関する顧客からのクレームはない。
  • 仮想化の利用シナリオ
    • 「古いアプリケーションを継続利用」がポイント。win2kからの移行。このパターンが増えてきている。
    • サーバーの冗長化について、VMotionに対応する機能は現時点でHyper-Vにはない。現状QuickMigrationという機能で提供。(コールドスタンバイ)
    • WindowsServer2008R2ではライブマイグレーションを搭載予定。ライブマイグレーションは要望されるものの実際には本当にそこまで必要としている人は少なく、ほとんどコールドスタンバイの対応でできると考えられる。
  • マイクロソフトの優位点
    • OS機能に標準で搭載、以前からWindowsサーバを利用している人には有効
    • システムセンタは仮想化だけでなく物理含めて管理が可能。
    • デスクトップからデータセンタの仮想化まで幅広いソリューションを提供
    • HWからAppまでワンストップでサポート可能。(継続したサポートを望む顧客が多い)
  • マイクロソフト製品の仮想化環境上でのサポート
    • ほとんどの製品を検証済。要望がおおいWSUSもHyper-Vでの動作を確認済
    • サンとも密接に連携しているためサンのxVMでのMSのソフトの動作はサポートされると理解してよい。
  • 導入事例
    • msdnのサイトは昨年春からHyper-Vで動作。社外導入事例も増えてきている。
  • マイクロソフトとサンの連携について
    • 2004年から包括提携をすすめている。2008年3月ころから、相互運用性への投資を拡大し、レドモンド(MS)内でサンのセンターを開設して検証などをおこなってきている。
  • 今後のアライアンス
    • Windows Serber 2008搭載のSunのサーバの出荷予定。(2003R2であればすでに実施中)
    • Solaris10Hyper-VゲストOSとして認定する取り組みを推進中(2009H1に完了の見通し)
    • SunのxVM VDIソリューションにおいて、Windows Server,Hyper-V,Windowsクライアントの技術を統合したソリューションを準備中
  • SunとMSは距離があるようにみられているが、5年前から提携、ここ1年はラボの開設などよりより密接な協業関係を構築し続けている。もっと見える形でアピールしていきたい。

閉会の挨拶(サン・マイクロシステムズ株式会社 下川考幸氏)

  • セミナーで伝えたかったこと
    • 仮想化テクノロジーは一部の人の技術ではなく、多くの人がつかえる状態であること。
    • Sunのx86サーバはたくさんの仮想化環境をサポートしていること。
  • 不景気なこの状況であるからこそ仮想化技術をベースとしてIT資源について再検討するタイミング。

感想

  • 仮想化技術を想定したCPUでの支援機能の開発は想像以上に進んでおり、数年以内にパフォーマンスに関するボトルネックはほぼ解消されるのではないかと想定します。また、InterやAMDなどハードウェアレベルで仮想化支援機能をサポートしようとしている状況であり、SunやMSの協業に代表されるマルチプラットフォームでの動作検証の推進などの動きからみても、仮想化技術がコモデティ化されるのは時間の問題であると感じました。
  • 各社の製品のポートフォリオとしてはサーバからデスクトップまでをカバーしようとしていますが、ソリューションとしてはどちらかというとデスクトップに注力されている様子。サーバの仮想化の可用性については機能があるといっても具体的にどこまでのことができるのかは明確ではない状況のため、適用にあたっては詳細な検証が必要と考えます。