渋滞学

子供の「なぜ、渋滞って発生するの?」という質問にうまく答えられなかった私です。:-)
筆者が10年かけて研究してきた渋滞学を一般の人にもわかりやすく解説したこの本。前半の渋滞のメカニズム的な話は十分噛み砕かれて説明されており、これまでの自分の断片的な理解を整理するという意味でもとても分かりやすかったです。ただ、この本はそれにととまらず、メカニズムを理解した上で、渋滞学を世の中のいろんな事象に当てはめてみるとこう解釈できる、という「5章 世界は渋滞だらけ」が一番のポイントかと思いました。特に、数ページではありましたが「お金がお金を生む」と題して、お金と渋滞学の関係の下りを説くセクションは興味深かったです。
マネーフロー」という言葉があるわけだから、なるほど渋滞との関係性は想像できるわけです。ここでは「お金の流れが渋滞するとは、そこにお金が溜まるということと考えることがでできる。」ということから、相続税に着目して論じ、最終的には「渋滞にならない自然な走り方(=お金の出し入れの仕方)が見つかれば、その応用により法律でコントロールしなくても格差社会が自然に緩和されるかもしれない。」(カッコ内は追記)と社会的視点での課題提起までで終わっていたのは少々残念。ただ、本書によれば、経済学と渋滞学を結び付けて研究することはこれまで誰も真剣に行ってないようなので、この観点で深掘りされた本が出たら是非読んでみたい所です。
あと、あとがきの中では筆者の専門家としての意見やいろいろ述べられていますが、その中で「クイズ王と専門家の違い」の話が面白かったので引用します。

クイズ王と専門家の違いは、例外まで含めてある分野の原理原則を知り尽くしているのが専門家で、専門知識の一部を例外抜きで満遍なく知っているのがクイズ王である。例外を知ることは、知識の適用限界を知ることにつながり、実際に知識を実生活に応用する際にはとても大切なものだ。その意味では、物事がうまくいっている場合には実は専門家はほとんど必要ない。しかしうまくいかないことが出てきたときに、それを解決できるのが専門家で、その存在は大変重要である。(P248)

専門家の仕事がいつも大変なのは、うまくいかないことが出てきたときに必要とされるからということで、納得。

渋滞学 (新潮選書)

渋滞学 (新潮選書)