世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 〜トップIT企業のPMとして就職する方法〜(比較表追記)

とあるルートでお勧めされていたので手に取ってみましたが、最近読んだ何冊かのキャリアプランに関する本の中ではダントツに良書でした。タイトルからお前は転職でもするのかと思われそうですが、著名なIT企業への就職を目指さなくてもプロダクトマネージャとして有用な考え方が豊富に示されており、今の自分に足りない視点やもっと意識して取り組むべきポイントを多く発見することができました。
特に、Chapter 4「良い経験を積む」のエンジニアからプロダクトマネージャに転身することの下りや、Chapter 5「キャリアを進める道」のキャリアを発展させるためのヒントとコツや、著名なIT企業のPMへのインタビューからのアドバイスはリアルで説得力あります。Chapter 6以降は実際の面談の話や質問されること(行動・見積もり・プロダクト・ケース・コーディング)への対策の話になっていますが、面談テクニックもさることながら、それらの質問どういう考えで何を問うているのか、という事が丁寧に示されているので、就活生や人事の方も大変参考になるのでは。「行動」に関する質問は自分の会社の面談でもよく問われるポイントだったりするので棚卸の時には再読したい章です。
本の中で"MBAの最大の落とし穴"として示されていた「落とし穴とは、何かをするべきかを語るだけで、実行する方法を知らない人になってしまうことです。」は、MBAに限った話ではないと思うので強く肝に銘じたいところ。沢山の引き出しをもらえた本でした。

著名IT企業の比較表(本書による)

(2015/8/30比較表を追記)

透明性 PMの人数比 TorB 風土 タイプ 技術 MBA 新卒 求めれらること
Google Bottom-up 気軽 コンピュータサイエンス(テクノロジ) 分析力、プロダクトのローンチの達成
Facebook 特に少ない Bottom-up 気軽 【独特】ハッカー(エンジニアリング) 起業家精神(自分でコードを書く)、後でPMを付ける場合あり
Yahoo Bottom-up 気軽 コンピュータサイエンス+バランス型 UXと長期成長、ライフサイクル全般に権限と責任
Apple ×(サイロ型) Top-down 懸命 エンジニアリングマネージャ(HW/SW) 不要 熱狂的、開発推進(各種調整)
Amazon ×(サイロ型) Bottom-up 懸命 MBA(技術不要) 不要 × ビジョンとロードマップ(技術以外)
Microsoft 多い(1/3) Top-down 気軽 プログラムマネージャ 実務推進(仕事を完成させる)、人数が多く多種多様
Twitter (歴史が浅く確立していない) 情熱的、何でも(ユーザ目線・豊富な経験・コンセプトとロードマップ)
  • 技術力を重視し、Bottom-upで進めるのが、GoogleFacebook。特に、Facabookは、自らコードを書ける人物を求める。
  • 同じく技術力を重視するが、Top-downで進めるのが、Apple
  • 上記と比べて、MBA視点も求めるのがYahoo。MBA視点を重視し技術は求めないのが、Amazon
  • 一方、多数のPMが存在し、PMが実務を推進するのが、Microsoft


世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~

世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~

NTT 30年目の決断

内容は、グローバル化の現状と課題/光コラボに関わる総務省や他事業者とのあれこれやその意味/ドコモの状況と今後のあり方/(本の帯にもある)「成熟化」と「土管化」そして「同質化」について/総務省が今後何を見据えているのか、といったところ。日頃断片的にしか見えない、NTTと通信業界を取り巻く現状の解釈の一つとして、うまくまとめられていると思います。結構、詳細な話が続く(光コラボあたりとか)ので、NTTの経営や通信行政についてある程度理解できてないと、ちょっと読むのに苦労するかもしれませんが、自分なりの理解や頭の整理にはよかったです。

渋滞学

子供の「なぜ、渋滞って発生するの?」という質問にうまく答えられなかった私です。:-)
筆者が10年かけて研究してきた渋滞学を一般の人にもわかりやすく解説したこの本。前半の渋滞のメカニズム的な話は十分噛み砕かれて説明されており、これまでの自分の断片的な理解を整理するという意味でもとても分かりやすかったです。ただ、この本はそれにととまらず、メカニズムを理解した上で、渋滞学を世の中のいろんな事象に当てはめてみるとこう解釈できる、という「5章 世界は渋滞だらけ」が一番のポイントかと思いました。特に、数ページではありましたが「お金がお金を生む」と題して、お金と渋滞学の関係の下りを説くセクションは興味深かったです。
マネーフロー」という言葉があるわけだから、なるほど渋滞との関係性は想像できるわけです。ここでは「お金の流れが渋滞するとは、そこにお金が溜まるということと考えることがでできる。」ということから、相続税に着目して論じ、最終的には「渋滞にならない自然な走り方(=お金の出し入れの仕方)が見つかれば、その応用により法律でコントロールしなくても格差社会が自然に緩和されるかもしれない。」(カッコ内は追記)と社会的視点での課題提起までで終わっていたのは少々残念。ただ、本書によれば、経済学と渋滞学を結び付けて研究することはこれまで誰も真剣に行ってないようなので、この観点で深掘りされた本が出たら是非読んでみたい所です。
あと、あとがきの中では筆者の専門家としての意見やいろいろ述べられていますが、その中で「クイズ王と専門家の違い」の話が面白かったので引用します。

クイズ王と専門家の違いは、例外まで含めてある分野の原理原則を知り尽くしているのが専門家で、専門知識の一部を例外抜きで満遍なく知っているのがクイズ王である。例外を知ることは、知識の適用限界を知ることにつながり、実際に知識を実生活に応用する際にはとても大切なものだ。その意味では、物事がうまくいっている場合には実は専門家はほとんど必要ない。しかしうまくいかないことが出てきたときに、それを解決できるのが専門家で、その存在は大変重要である。(P248)

専門家の仕事がいつも大変なのは、うまくいかないことが出てきたときに必要とされるからということで、納得。

渋滞学 (新潮選書)

渋滞学 (新潮選書)